東洋医学の「肝(かん)」は、現代医学の肝臓とは少し違います。血(けつ)を蓄えて全身に配り、筋肉や目を養い、気のめぐりを整える、いわば「体の司令塔」のような蔵です。
40代以降、なんとなく目が疲れやすくなった、イライラしやすくなった、筋肉がつりやすくなった。。。そんな変化を感じていたら、肝が関わっているかもしれません。
肝の主な働き
①血を臓す(けつをぞうす)
肝は体の中の血(けつ)を蓄えておく「貯蔵庫」です。活動中は血を全身に送り出し、休んでいる時は血を肝に戻して養います。「人が臥(が)すれば血は肝に帰る」(人が横たわれば血は肝に戻る)という言葉があるほど、睡眠と肝の関係は深く、質の良い睡眠が肝の血を養うことにつながります。
肝の血が不足した状態が「肝血虚(かんけっきょ)」。血虚の中でも特に肝に関わる血の不足です。
血虚との関係についてはこちらもご覧ください。
②筋を主る(すじをつかさどる)
肝は筋肉や腱を養う働きがあります。肝の血が充分であれば、筋肉はしなやかに動きますが、不足すると筋肉がつりやすくなったり、関節がこわばったりします。40代以降に足がつりやすくなるのは、肝血の不足が一因と考えられています。
③目に開く(めにひらく)
肝の状態は目に現れやすいと考えられています。肝血が充実していれば目はよく見え、不足すると目が疲れやすくなったり、かすんだり、ドライアイになりやすくなります。東洋医学では「目を使いすぎると血を消耗する」と考えられているので、スマホやパソコンを長時間使う現代人は特に注意が必要です。
④気のめぐりを整える(疏泄:そせつ)
肝のもう一つの大切な働きが「疏泄(そせつ)」。気をスムーズに巡らせる機能です。肝の疏泄がうまく働いていると、気持ちが安定して、消化も良く、体全体の巡りが整います。
ところがストレスや感情の抑圧が続くと、肝の疏泄が乱れて気が滞ります。これが「気滞(きたい)」の状態です。
気滞についてはこちらで詳しくお伝えしています。
肝が弱るとどんな不調が出る?
肝の不調は、目・筋肉・感情・睡眠など、意外と幅広いところに現れます。日常生活の中で「そういえば」と思い当たることがないか思い出しながらチェックしてみてください。
- 目が疲れやすい、かすむ、ドライアイ
- 足がつりやすくなる
- 爪が割れやすい、すじが入る
- イライラしやすい、怒りっぽくなる
- 寝つきが悪い
- 中途覚醒しやすく、覚醒後眠れない
- PMSがつらい、情緒が不安定になる
- 頭痛がこめかみや頭頂部に出やすい
これらは全て肝のサインとして東洋医学で昔から知られているものです。

40代以降に肝が弱りやすい理由
東洋医学では「女性は7の倍数で体が変わる」と考えます。42歳(7×6)を過ぎると肝の気が衰え始め、49歳(7×7)には体の大きな変化が起きると言われています。
また、現代の生活習慣も肝を弱らせやすい要因が多くあります。
東洋医学では「怒りは肝を傷つける」と言われています。怒りの感情そのものが悪いわけではなく、長期間感情を抑え込んでストレスがたまると、爆発したときに肝を消耗させると考えます。感情も「流す」ことが大切です。
心当たりがある方は、少し生活習慣やココロを開放する時間を意識してみてください。
ツボでセルフケア
①太衝(たいしょう)|肝の気の巡りを整える
場所:足の甲、親指の人差し指の骨の間をなぞっていくと、骨がぶつかる手前のくぼみ。
肝経の原穴(げんけつ)で、肝の気の流れを整える代表的なツボ。イライラや気体のケア、血圧の高い方に特におすすめのツボです。息を吐きながらじんわり5秒×3セット。

②三陰交(さんいんこう)|血を養う
場所:内くるぶしから指4本上、骨の際。
肝・脾・腎の3つの経絡が交わるツボ。血を補いながら気のめぐりも助けてくれます。太衝とセットで押すのがおすすめです。

食事でできる養生|スーパーで整える
肝を養う食材を意識的に取り入れてみましょう。
酸味のある食材(梅干し、黒酢、柑橘系果物)・レバー・あさり。ほうれん草・にんじん・牡蠣・トマト・いか・しそ・セロリ・春菊
東洋医学では「酸味は肝に入る」と考えます。梅干し・酢・柑橘類などの適度な酸味は肝を助けてくれます。ただし摂り過ぎは逆効果なので「適度に」が大切です。
また、「怒りは肝を傷つける」とも言われます。感情のコントロールも肝のケアのひとつ。深呼吸や軽いストレッチで気を動かすことも養生になります。
おわりに
東洋医学の「肝」は、血を蓄え、筋や目を養い、気の巡りを整える__体の中でとても多くの役割を担っています。
40代以降は特に肝が弱りやすい時期。目の疲れ、筋肉のつり、いらいら。。。それらのサインは「肝からのメッセージ」かもしれません。
小さなセルフケアの積み重ねが、体の底力を支えてくれます。


